アイリッシュドレスデン
詳細コメントを書く時、いろいろ文献や書物を参考にしますが、それらの中に、よく似たお品を見つけたり、バックスタンプが同じであったりすると「やった!」という気持ちになります。
コメント欄では、お客様にお伝えしたいことがいろいろありますから、もう少し書きたいことがあっても省く場合があります。
次回ご紹介しますアイルランドに咲いた繊細優美なレース人形について少しお話しておきます。
18世紀初頭に、マイセン磁器焼成の成功に遅れること半世紀、マイセンの西160キロほどのチューリンゲル地方で、マイセン磁器とは組成の異なる磁器がつくられる。そのいくつかの工房ではじめられたのが、繊細優美なレースをまとった“ドレスデン人形”です。
1895年、陶工アントン・ミュラーがフォルクシュテットにドレスデン人形の工房を開きましたが、第二次世界大戦末期にソ連の支配下に置かれ、ミュラーの縁者が地下室に残された貴重な原型を持ち、必死の思いで国境を越え、西ドイツに渡り、そして海を越えてたどり着いたアイルランド南西部のドロムコリハで工場を再建、社名をアイリッシュドレスデンとしました。
レース人形はどのように作られるかと申しますと、
素焼きしたビスクドールに、特殊な磁器粘土の溶液に浸した純綿のレースを飾りつけ、
1300度前後で焼成すると、布地は焼失してレースの網目だけが残るというわけです。
生き生きした表情やしぐさもさることながら、この人形の命は、ふっくらしたレースの質感にあります。
大きな手が、息をつめるようにして一枚一枚を配していく。
袖口のフリル、クリノリンスカートの広がり、やわらかい光の下で微笑む人形の顔には、おっとりと夢を見ているような優しさがうかがえます。
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